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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
21/31

021



琥珀が神社に来てひと月が経ち、

山は紫色の装いを始めた。


琥珀はこの頃から、

窓の外を眺めることが増えた。




美青「こーはくっ。何見てるの?」



琥珀は美青の顔を見るが、すぐに

窓から見える山へと視線を戻す。




叶実「藤の花、よね。飼い主さんとの

約束を、この子はちゃんと覚えてる」




美青「じゃあ今週の日曜日、藤の花を

見に約束の場所に行ってみる?」




叶実「あの場所を知ってるの?それに

行っても飼い主さんには…」




美青「それでも琥珀は行きたいと思う。

会えなくても、思い出の場所だから。

あれからずっと調べてたんだー。やっと

見つけたよ!少しだけ距離があるけどね」




叶実「…琥珀、どうする?行ってみる?」




叶実の問いに、琥珀は

ニャー!と力強く鳴いて答えた。







その日の帰り道



美青がコンビニに寄ると、

すれ違った男に違和感を覚えた。



勢いよく振り返ると、男の背中には

【●●市消防局】という文字が

書かれていた。


時折左肩を気にしながら歩いている。



美青は跡を追い、男が車に乗って

正面を向く瞬間をじっと待った。




美青「あの顔…やっぱりそうだ…」



すぐにスマホを手に取り、

叶実に電話をかけてこう言った。




美青「あのね…琥珀の家に侵入した犯人、

消防士だった。飼い主さんが運ばれた時に

琥珀のことを知ったんじゃないかな。

まだコンビニの駐車場にいるよ」




叶実「間違いないのね」



美青「私は一度見たら忘れないわ」




すると、目の前に黒い蝶が現れた。

叶実が鏡から送り込んできたのだ。




叶実「男の乗る車を教えてあげて。

ついて行かせるわ」



美青「わかった、ありがとね。」




美青は蝶に男の車を教える。


蝶は、僅かに開いた窓から

さっと侵入して身を潜めた。



蝶の身を案じながら、

男が駐車場から走り去るのを見届ける。



美青「人を守る肩書きを背負っておいて

私欲に利用するなんて…許せない」




美青は、車体が見えなくなるまで

じっと睨みつけ続けた。




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