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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
19/22

019



叶実達は、蝶を連れて万華鏡部屋に向かった。


猫もしっかり後をついてきている。



鏡に蝶を移動させて、吸い取った映像を吹き込む。


鏡には、神社に辿り着くまでの映像が流れた。





満開に咲き誇る藤の花のトンネル。

その下では杖を持ったおばあさんが花を見上げている。


足元には、あの猫がいた。


花の隙間から日差しが差し、少し眩しい。



おばあさんは、猫に話しかける。



「今年も一緒に見れたね、琥珀(こはく)



琥珀はニャーと鳴き、足にすり寄った。



「琥珀、来年も再来年も、ずっと一緒にこの花を

見に来ようね。お願いだから、お父さんのように

先に行かないでおくれ。約束だよ」



そう言っておばあさんは、

琥珀の目線に合わせて屈み、頭に手を伸ばした。



琥珀は、自分から掌に当たりに行って

頭を擦り付けてゴロゴロと喉を鳴らした。



それからは、仲良く食事をしたり、

一緒に寝たりする仲睦まじい生活が見られた。




夏は冷たい床にお腹を出して寝転がる琥珀を

おばあさんがカメラに収め、



秋はおばあさんが銀杏の葉を集めていると

琥珀がいつの間にかベッドにして居座り、



冬は雪が気になり一歩足を踏み入れるも

冷たくてすぐに部屋に戻って大笑いする。




二人が四季を感じながら過ごす丁寧な生活が

とても微笑ましく映っていた。




そんな優しい時間が一変したのは

桜を眺める二人の映像の後だった。








昼食を終え、洗い物を終えたおばあさんは

琥珀と(くつろ)ごうと居間に向かった。


琥珀の隣まであと一歩という所で、

急に胸を押さえて倒れこんでしまう。



眠っていた琥珀は驚いて起き上がり、

おばあさんの顔を何度も舐める。



だが、いつものような笑顔が返ってこない。


異変を感じた琥珀は大きな声で泣き叫んだ。



その声を、偶然家の前を通りかかった

おばあさんの友人である鈴木さんが聞きつけ、

何事かと思い、家に立ち寄る。



倒れているところを発見され、

おばあさんは救急車で運ばれていった。



鈴木さんは数日間、琥珀の為に

寝泊まりして面倒を見てくれた。



琥珀はおばあさんが心配だったが、鈴木さんが

一緒にいてくれるおかげで寂しくはなかった。



数日経ったある日の夜、

二人が寝静まった頃、ガタンと大きな物音がした。



鈴木さんは飛び起きて、琥珀を抱き抱える。



立てかけてあった防犯用の竹刀を手に持ち、

音を立てないようにして押し入れに隠れた。



ほんの僅かな隙間から様子を見ていると、

一人の男が姿を現した。



男は猫なで声で琥珀を呼んだ。



男「琥珀くーん、出ておいでー」



琥珀も鈴木さんも見たことがない男だが、

どこかで三毛猫のオスを飼っていることを

聞きつけたのであろう。



男の目当ては、琥珀だ。




段々男は押し入れへと近付いてくる。


ついに目の前まで来て押し入れに手をかけたと

同時に、琥珀は飛び出した。



男「あ!待て!こら!」



男は鈴木さんには気付かず、琥珀の後を追う。



鈴木さんは背後から竹刀を振り下ろし、

驚いた男は左肩を抑えながら逃げて行った。



琥珀は無我夢中で逃げ、もう追って来ないだろうと

身を潜めたのは、見たことのない地域だった。



琥珀の姿を見つけた人達は皆、

ご飯を与え、可愛がってくれた。



オスだと気付かれることを恐れて

一日ごとに家を離れて移動していた。



逃げてきてからは、大体二週間は経っている。



山奥まできてしまい、今日はどこで寝ようかと

寂しげに歩く琥珀。


その時目に留まったのが、叶望神社だった。






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