5_オオムラサキの約束
美青「はーい出来たよー!今日のメニューは
鰆の西京焼き定食です!!」
叶実「筍の味噌汁に、小鉢が三つも…ここは
料亭?美青、あなたと生涯を共にしたいわ」
美青「え?プロポーズ?私がお嫁に行ったら
蝶花楼さんはどうするつもりなの?」
叶実「させないわよ。それかここに住めばいい」
美青「そんなの結婚する意味ないじゃない!」
叶実「やめましょう…そんな、あるか否かも
分からない未来の話は…」
美青「失礼でしょ!絶対結婚するんだから!」
叶実「無理しないでいいのよ、だめでもうちで
専属家政婦として住み込むのも選択肢として…」
叶実が魚を食べようと箸を伸ばして
そう言いかけると、まだ手を付けていないはずの
西京焼きが少し減っていることに気付いた。
叶実「ちょっと美青!!いくら将来私と住むのが
嫌だからって、私の魚を食べなくてもいいじゃない!
しっかりあなたの分から取らせてもらうわ」
美青「何のこと?私、そんなに卑しくないから!
喋っていた時に口を見てたでしょ?食べていたら
モグモグしてるでしょうが!!!」
叶実「…確かに。じゃあ誰が食べたっていうの?」
叶実が考えていると、
後ろの方から咀嚼音が聞こえてきた。
二人が同時に振り返ると、
冷蔵庫の方から音がしている。
忍び足で手前まで移動し、そっと覗くと
そこには三毛猫がいた。
盗んだ魚を食べ終えた猫は、手を舐めたり
顔を洗う仕草をしながらリラックスをしている。
美青「骨の処理をしておいてよかったー!
ねぇ、流石に猫ちゃんに怒らないよね…?」
叶実は険しい顔で猫に近付き、
腕を組んで立ちはだかる。
猫は叶実に気付き、逃げるかと思いきや
お腹を出して寝転がり始めた。
顔色一つ変えずに膝をついて猫に近付く叶実。
美青「蝶花楼さん!猫ちゃんを許してあげて!」
ついに猫の頭に手が伸び、
美青は恐怖で思わず目を伏せた。
恐る恐る視線を戻すと、
叶実は猫の頭を撫で回していた。
叶実「この耳。このフォルム。可愛いの具現化。
魚、美味しかったのね。よかったわ。君なら許す」
猫はゴロゴロと喉を鳴らし、叶実に甘える。
美青は猫が無事でそっと胸を撫でおろす。
叶実の隣に座り、一緒に猫を愛でる。
すると、叶実があることに気付く。
叶実「大変よ…この子、三毛猫のオスだわ」
美青「えぇ?三毛猫のオスって、かなり珍しくて
稀少なんじゃなかった?飼い主さん、今頃きっと
必死になって探してるはず…警察に連絡しよう!」
立ち上がってスマホを手に取ろうとしたその時、
猫は美青の膝に手を乗せ、ニャッ!と鳴いた。
ダメ!と言っているように見える。
美青「可愛い…!なになに?可愛すぎる!!」
叶実「今、確かにダメって言ったわよね?完全に
そう言ったわよ!じゃあ、うちの子になる?」
美青「飼い主さんの気持ちを考えて!家族が
いなくなったんだよ?それに…この子の場合、
嫌な人に拾われたら売られてしまう場合だって…」
叶実「そうね、そんなこと絶対させない。張り紙で
飼い主を募っても、嘘をついて引き取りに来る悪人も
いるだろうし…どうやって飼い主を探そうかしら」
二人が悩んでいると、
猫の花に蝶が止まった。
美青「あ!蝶が迷子になった時の状況を吸い取って
その映像が見られたら…何か手がかりがあるかも!」
叶実「それしか方法はない。お願いできるかしら」
叶実が蝶に尋ねると、蝶は猫の左耳へ止まった。
蝶が鬱陶しいのか、猫が何度も耳を動かすため
吸うまで時間がかかったが、何とか吸うことが出来た。
蝶の羽は黒く縁取られ、青紫色に変色し、
黄色と白の斑点が散りばめられた。
その姿は、まるでオオムラサキのようだ。




