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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
11/17

011




その日の夕方





美青の作ったカツ丼を食べる叶実の元に

蝶がやってきた。




叶実「どうだった?」




叶実の問いに、蝶は羽を(はため)かせる。





叶実「…事態は深刻ね」





美青「もしかして、朝に来た夫婦のこと?」




叶実「あなたも気になってたのね。そう。

とても暗い影が見えたから、この子に

頼んで家を見に行ってもらったのよ」




美青「そうだったんだ。娘さん、大丈夫?」





叶実「あの土砂降りと雷が凄かった日から

娘の様子がおかしくて、学校にも行かずに

部屋から出てこなくなったみたい。両親も

原因が何だかわからなくて困ってるって。

ちなみに雷は近所の家に落ちたようだから

相当大きな音がしたと思うわ」




美青「でも…自分の家に落ちたわけでは

ないんでしょ?いくら怖かったといっても

二週間も引きずるかな…?」




叶実「そうね…あの日に何か別のことが

起きたと思うのが自然だと思うわ。でも

話を聞こうにも、この子が飛んでいても

気にも止めずにずっと泣いているって」




美青「じゃあどうすれば…」





叶実「明日、万華鏡部屋から娘の様子を

覗いてみましょう。誰にも話したくない、

もしくは話せないのかもしれないわ。

この子に闇吸いしてもらいましょう」





美青「この子が吸った娘さんの声を…

私達は聞くことが出来るの?」




叶実「えぇ。そのまま誰かに心の闇を

植え付けることだって出来るんだから」




美青「それはちょっと…」




叶実「基本はやらないわよ。まあ…

余程のことがなければ…だけれど」





美青は叶実の話を、まさかそんなことは

起きないだろうと思いながら聞いていた。








翌日の夜



闇吸い決行時間の数分前に

雨が降ってきた。



雨足は徐々に強まり、

今では土砂降りになっている。




美青「あの日と同じくらい降ってるね…」




叶実「偶然だけど、偶然じゃないみたい」




叶実はそう言いながら、

万華鏡に手を触れた。




映し出されたのは、真っ暗な部屋。



ベッドの上には(うずくま)って怯える少女がいる。





美青「この子が春佳さん…」




美青が声を放ったその時、

大きな雷鳴が轟いた。




春佳「きゃあぁー!!!」



娘の叫び声を聞いた両親は、

慌てて階段を駆け上がってきた。




頭を抱えながら泣き叫ぶ春佳を

両親は宥めながら抱き締める。




叶実「さぁ、行ってらっしゃい」



叶実は、指の先に止まっていた蝶を

鏡の前に連れて行く。




蝶は鏡を通り抜けて春佳の部屋に入った。



真っ暗な部屋の中で、

白い羽が光って見える。




家族は必死で、誰一人蝶に気付いていない。




蝶はゆっくりと春佳の左耳に止まる。


そして、花の蜜を吸うように

口吻を耳の穴へ向けた。




蝶の羽は、みるみると変色していく。




黄色に黒の縞模様。

その姿は、キアゲハそのものだ。




心の闇を吸い切った蝶は、

鏡を超えて万華鏡部屋に戻ってきた。








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