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7.決意と選択が通ります(2)

「うーん、どうしようか……」


別行動の二人と合流し、停めていた車に戻ってきたところだ。


隣の地区でも同じことが起きていたらしく、何度回っても住民同士は同じやり取りを繰り返し、時間も進まないままらしい。


「とりあえずもう一回地図見返してみようぜ。」


「時間が進んでないのはこの住宅地と、ここと、ここと…」


桃華がタブレットのマップ上に印をつけていく。


「今いるのはちょうど真ん中辺りだね…」


「情報部との連絡は?」


「取れなさそうだね…」


情報共有を進める三人にふと疑問に思ったことを投げかける。


「……私ほんとに一般人なんだけど、力になれることあるの…?」


「別に僕たちも一般人だよ」


「そうそう、俺等別に特別な訓練とか受けてないから。」


「……そうなの?じゃあどうやって…」


「それはね………じゃーん!これを使うんだよ!!」


そう言って桃華が得意げにトランクから出してくれたのは………腕時計?のようなものだった。


「……これは?」


「エネルギー変換用の装置だね。」


「エネルギー変換?」


「俺等は普通の人間と違って、怪奇エネルギーが体内にあるだろ?それを運動エネルギーとか、光エネルギーとか、まああんまよくわかんねえけど変えれるんだよ。」


「逆もできるんだよ!!普通に存在するエネルギーを怪奇エネルギーに変えたりもできるの!!はい!なっちゃんにもこれ!」


「ふーん……なんだか難しい…」


桃華から手渡された装置を眺める。少しゴツゴツとした機械には、複数のボタンがあり、中心にはタイマーや電卓と同じような数字が表示されるディスプレイが付いていた。


「俺等は怪奇エネルギーも普通のエネルギーも全部まとめてエナジーって呼んでるけどな。」


「元来の科学的なものだけじゃなくて、精神依存的な要素とか、活力って感じのイメージだからね。エナジーの方がしっくりくるかも。」


「まあ俺は難しいこと分かんねえから感覚で使ってる。」


「はぁ…これだから脳筋は」


「あ?誰が脳筋だこら」


「夕月くん以外にいないでしょ!そんなんで倒れちゃったらどうすんの?」


「そ、そんなに危ないものなの…?」


不穏なワードが聞こえて聞き返す。


「自分のエネルギーを使うわけだから、体力と同じで無限じゃないんだよ。」


「そう!出力間違えて使いすぎるとエナジー切れて倒れちゃうし、身体にも悪影響あるんだからね。」


「俺だってちゃんと調節くらいしてるわ。」


「どうだか。」


「二人とも〜……」


「あはは…」


相変わらず減らず口の二人である。


「まあ、そんな訳だから必要最低限しか使わないようにはしてるんだけど……」


「結局いつも使うことになっちゃうんだよね。」


「緊急事態だ、渚沙も取りあえずつけろ。」


「わ、分かった。」


緊張しながらも装置を装着する。


「今は使えなくても大丈夫。精度は良くないけど、一応防衛システム的な物があって、明らかに危険だったら自動で起動するようになってるからね。」


「なっちゃんはお守りとしてつけててね!」


「分かった。」


そう言われたらさっきまで危なそうだった装置がなんだか頼もしく見えてきた。


「それと…はい。」


「こっちは…?」


律くんはまた新しく小型の機械のような物をトランクから出してきた。


「こっちは怪奇エネルギーを測れる機械。まあ、これを起動するにもエナジーが必要なんだけど…」


「だから結局いつも変換装置つけることになってるんだよねー…」


「解析部が普通の電力で動くやつ作ってくれるのを祈るしかねえな…」


「あはは…そうだね。渚沙ちゃんはとりあえず桃華ちゃんといっしょに見て回ってもらおうかな。」


「分かった。」


「よろしくね、なっちゃん!」


にこにこと覗き込んでくる桃華にこちらもつられて笑顔になる。


「見て回るのは中心になってるこの公園内でいいのか?」


「そうだね。それじゃ、手分けして手がかりを探そう!」


「「「はーい」」」


そこからは4人で公園の隅々まで調べた。


測定機から伸びる測定用の端子を対象物に取り付け、丁寧に怪奇エネルギーを測ってゆく。

植わっている木一本一本、トイレの個室、遊具、ベンチ………


「よし!あとは律くんの調べてる時計だけだね!」


そう言って時計を測定中の律くんの元へ向かおうと、桃華とともに歩き出した時だった。


「……………。」


一羽のカラスが目に付く。

そんなところにいたっけ、お前。


「………なっちゃん?」


なんとなくそのカラスに違和感を感じて、私はゆっくりと歩み寄ろうとした。


ーーグニャ


すると、突然カラスがドロリとした液体に変化し、辺りを真っ黒に染めた。と思った次の瞬間。


「なっちゃんっっっ!!!」


「っっっ…!?」


突然足元が液状化し、気がついた時には腰まで一気に体が沈んでいた。


「っ!!渚沙ちゃん!」


「渚沙っっっ!!」


三人が私の名前を大声で呼び駆け寄ろうとするが、すぐに不自然なほど静かになった。


「……………?」


……何が起きたんだ?

先程まで凄い速度で沈んでいた体も、今度はゆっくりと黒い沼にはまっていってる。

私を助けに駆けつける三人もスローモーションのようにゆっくりと私に向かってきている。


その中で唯一私だけが普通の速度で動いていた。


「と、とにかく何とかしないと…!!」


私は先程つけた変換装置に手をかけた。


「……使い方分からないけど…とにかく何かしなきゃ…」


やみくもに装置をいじる。


「これ…?じゃない、これでもない………こっちでもない…………」


ーーカチッ


ーーピッ


無機質な機械音が耳に響いた。

次の瞬間。


ーーゴォオオ


「っっっ!!」


体がものすごく熱い。

まるで、炎の中に放り込まれたような感覚と、強い光に思わずぎゅっと目をつむる。


遠くで名前を呼ぶ声が聞こえるような気がした。


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