4.残酷な運命が通ります(1)
「トイレがここで〜…」
ルンルンで施設の案内をするももかちゃんについて歩く。
どうやら私の仮説は当たっていて、最初にいた場所は保健室だったらしい。
国の研究施設ならもっと大きくて立派なのかと思っていたが、情報操作の関係で建物を新設したりするのは厳しいんだとか。
そういった意味ではこの廃校になった小学校は何かと都合がいいらしい。
人数の少ない小学校だったらしく、学校自体の大きさが小さいうえに、だいぶ辺鄙なところあるようだ。
特異事象対策庁……通称「特事」と呼ばれているらしいが、特事には実働部、解析部、情報部の三つの部署があり、みんな学校に住み込んで仕事をしているそうだ。そのため、各教室も用途別に大幅に改装されており、一目では学校とは気付けなかった。
例えば、窓や黒板、教壇や教室の扉はそのままだが、教室だけど椅子とか机が一つもなかったり。なぜか普通にガスコンロや冷蔵庫ついてたり。壁ぶっ壊して部屋が広げてあったり。個人用の部屋に関しては、普通に小さめの風呂とかついてた。
……………………これなら、ナポリタンが出てくるのも納得だ。
「で、ここが実働の使ってる教室だよ~」
この部屋もだいぶ改装されている。
ラグが敷いてあって、ソファがおいてあって、冷蔵庫とガスコンロ付き。
黒板と上にかかっているスクリーンはそのままにされていて、あと普通の机といすも少々。
なんとなく居心地のよさそうな場所でよかった。
もしこれが普通の病院とかで検査結果を一日半も待たされることになったら死ぬ。
「ここにいる間は施設は自由に使ってくれて構わないよ。寝るときは、隣の空き教室に布団が置いてあるから今日は良ければそこを使って。」
「ありがとうございます、えっと.....なんてお呼びすれば.....?」
「あ、自己紹介してなかったね。三岡律って言います。」
律さんは優しそうな笑顔でそういってくれた。
「ももかも?」
「…………そうだけど…」
「あぁ、そういや……」
「…どうしたの?」
私が3人に聞くと、しばらく沈黙が続く。
……もしかしてなにかまずいことでも聞いてしまったのだろうか。
「…ううん、何もないよ!ももかって言いまーす!小六だよ!!なっちゃんも気軽に桃華って呼んでね〜」
「じゃあ、桃華…?」
「うん!なっちゃんよろしくね」
何かあるのか気になったが、桃華が喋るとさっきまでの空気はどこかへ消えてしまった。
「清里夕月。夕月でいいぜ、多分お前と同い年だから。」
「え……そうなの?」
「…なんでそんな「見えない」みたいな顔してるんだよ……」
「いやぁ……てっきり成人済かと…」
「ふふ、夕月くん老けてるって言われてるー」
「失礼だなおい。」
「なっちゃん律くんの年齢とか知ったらびっくりなんじゃないの〜??」
「確かに。律くんこいつに年齢教えた?」
「いやぁ……年齢の話は〜…」
そんなにびっくりする年齢なのだろうか。
というか夕月…って、律くん呼びなんだ。
「律さんは…おいくつなんですか…?」
「あ、敬語じゃなくていいよ!それに、さん付けもいらないよ。」
「じゃあ……律くんはいくつなの?」
「………えーっと…」
「?」
「その……………29…みたいなね……あはは…」
「はい…………?」
……今日一番の衝撃である。
特異体がどうとかよりも衝撃的だったまである。ほんとに。
「ふふん、律くんって若いでしょ〜?」
「なんでお前が得意げなんだよ…」
「夕月くんも得意げな顔してたじゃん。」
「………もうやめて二人とも……」
なるほど………確かに。苦労人の慕われお兄さんだと思っていたけど、もしかしてかわいい系癒やし枠お兄さんなのかもしれない。
「これは…私も自己紹介したほうがいいの?」
「一応?俺らは基本情報知ってるけど。」
「確かに、交流の意味も込めて一応お願いしようかな。」
「えっと、臼田渚沙です。呼び方は好きに………ってもうみんな適当に呼んでるか。律くんもさん付けじゃなくて大丈夫。」
「分かった。じゃあ、渚沙ちゃん!改めてよろしくね。」
みんなの顔と名前が完全に一致したところで夕月が口を開く。
「…てか飯食わねえ?」
「たしかに、僕もお腹すいてきたかも。なんだかんだもう夕飯の時間だし。」
そういって昼の残りのナポリタンを出してきた。
「…あと何かあったかな〜?あ!唐揚げがある!解凍して食べようか。」
「さんせー!」
「…えっと、私も何か手伝うか?」
「あ、じゃあお湯沸かしてほしい。カップ麺用な。」
「おっけー」
そう言って夕飯の支度を手伝おうとしたときだった。
ーーガラガラッ
「飯食うところだったのに悪いね。緊急の知らせだ。」
「やべっ、ナポリタン」
「………あ…?」
目にとめてくださった皆様、ほんとにほんとにありがとうございます!拙作ではありますが評価、感想もらえるとうれしくて小躍りします。




