57 シダの群生
マロンとソラとココが岩の多い場所を走り抜けました。皆、足元が滑って、岩肌に顔や足をこすり、引っ搔き傷だらけです。目の前に、シダの群生が広がります。ここを過ぎれば、沼に出ます。マロンは顔にかかるシダの葉先を手でかき分けて払いのけました。シダの葉の茎が折れて、幾つかの葉が元気なくぶら下がりました。マロンはシダの群生の中に潜り込む前に、後ろを振り返りました。ソラがマロンの目を見て、頷きます。ココが後ろで荒い息を吐いて、肩を上げ下げしていました。マロンは、茂みに飛び込みました。ソラもそれに続きます。
マロンたちは、身を低くして先を急ぎました。大きいシダの株を回り込むと、ぬかるみがありました。マロンが勢い余って曲がり切れずにぬかるみにつっこみます。
「あ、いてて、いてーっ」
マロンの頭が何かにぶつかりました。マロンは痛みに目を閉じたり開けたりして、頭を手で抱えました。ソラは、急に止まったマロンのお尻に鼻を強くぶつけました。更に、後ろのココがソラにぶつかり、ソラの顔はもう一度マロンのお尻に押し付けられました。
マロンは邪魔ものに怒って、顔を赤くして歯をむき出しました。その時、ソラが声を上げます。
「チク!!」
マロンは両腕を下げたまま、立ちすくみました。マロンは口を開けて、チクを見ています。チクがマロンに腕を回し、ゆっくりと抱きよせました。チクの身体には乾いた泥が鎧のように固まっていました。マロンがチクに大泣きしてしがみつくと、パラパラとチクの身体から泥の欠片が落ちていきます。ソラもココもチクに抱きつき、泣きました。マロンの「おー、おー」という嗚咽は止まりませんでした。




