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ハリーさん、こんにちは  作者: ゴリラ
森のなか
35/58

35 苔の下 

「水に溶かして使った後に、四つ葉のクローバーが残るようになっているんだ」

チクは、泥パックを持った手をお尻の後ろに隠しています。ココは、チクの後ろの手を透かして見るようにして言いました。ポポが、ココの顔を見上げます。ココは足幅を少し広げると、腕を組みました。ココの言葉に、ポポが「へえー」と長く言い、声の音程を少しずつ上げていきます。

 マロンが「四つ葉!よ、つばっ!」と言いながら、大きく腰を左右に振ります。ポポも真似し始めます。ポポの「はあーと!ハート!」の掛け声がマロンの拍の中に混ざります。「四つ葉」と「ハート」の合唱で、祭りの踊りの足取りとなります。二匹は、腕の上げ下げを付け足しました。

 チクは、笑い転げました。苔の上に背中をつけて、寝そべります。ゾエのくれた泥パックの素は、チクの手の中で息をひそめています。チクは、上半身を起こして胡坐をかきました。胡坐の膝の上で指を開いていきます。干からびた塊のハートのへこみは左よりでした。気難しい顔のようなハート型を、チクは指でつつきます。

 チクは、ゾエに小枝のペンを借りたことを思い出しました。ゾエの小枝は、周りを削りすぎる側が潔い崖のようになっています。一方、その反対側は、中心に向けて、程よい傾斜をつけて削られています。チクは、どうやったらこんなペンで文字を書けるのか、首をひねっていました。ゾエは、チクの不思議そうな目つきに、「返さなくていいよ」と肩を叩いて笑いました。チクは、今、ゾエらしいハートの形だとしみじみ思うのです。

 チクは、尻の下に苔の盛り上がりを感じていました。勢いをつけて、立ち上がります。チクの鞄が少し離れた場所に放り出されていました。その上を狙って、チクはゾエの贈り物をひょいと投げました。泥の塊は、四つ葉を上にして、行儀よくチクの鞄の上に座ります。

 チクは、先の苔の下に指を入れ、手を裏返して土をおこしました。

「おい、ここ、すごいぞ」とチクが言います。

マロンとポポは、ココの腕にぶら下がっていましたが、唄うのをやめてチクを見ます。ココは、自分も踊れと引っ張られて体が振られて、目が回りそうでした。

 苔は、トランプのカードのように、チクの爪で次々捲れられます。マロンが一番に走って来ました。

「あー、いっぱいいる」

マロンは、手を叩き跳ね回ります。

「だめだ、跳んだら、ミミズが逃げてしまうぞ」とチクが言います。

マロンは、体を低くします。急に、ゆっくりと足を置き、口を手でふさぎます。ポポは地面に這いつくばりました。チクが掘った湿った土の表面で、突如、空気に晒されて縮こまるミミズが艶やかな桃色を隠そうと地面に隙間を探しています。仲間の体の下に身をくねらせるミミズが悲鳴を上げています。ポポは、爪の先にミミズをひっかけては、口に放り込みます。ミミズは、体の皺を伸び縮みさせ、地面の中へ潜り込もうともがいていました。

 ブールビエの岸辺の樹の周りで、四匹は宝探しをするように、土の匂いを嗅ぎまわります。何日か前に降った雨のお蔭で、苔は普段よりも水を含んでいます。ミミズたちは、苔の下で身を寄せて、噂話でもしていたようです。


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