軌跡
「軌跡」
pyamaryo
「探したよ」
聞き覚えのある声に引っ張られるように私は振り向いた。まるでしばらく聞いていなかった声に懐かしみ、目頭が熱くなる。
「どうしているの?」
私の震える声に、彼は微笑むと優しく私を抱きしめた。彼のシャツに私の涙のしみができる。それが少し恥ずかしくて、でもこのまま離れたくなくて、彼の胸に潜るように顔を擦り付けた。しわくちゃにしてしまったシャツを手で撫でて衣服の波を伸ばし一歩下がる。
「探さなくても、そのうち会えたのに」
鼻の先が赤くなってるのが少し視界に入っている。
「いやぁ…待ちきれなくてさ」
「良かったの?」
私の問いに彼は頷くと、手を握り同じ歩幅で目的地もなく歩き始めた。
「君がいない世界なんてありえなかったからさ」
私は少し複雑な気持ちになりながらも、その言葉を聞いて、握っていた手を離し、彼の腕にしがみついた。