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ツタンカーメンの本当の王墓はどこにある? ⑦

では、ツタンカーメンが自らの意思で埋葬品にアテンの名を多数残した理由は何か?

前述した黄金の玉座を例にして、まずは葬儀から遡るか形で、これまで示された意見、ではなく先達によって披露された推理をふたつほど紹介しよう。


ひとつ目。

黄金の玉座は愛用品であり、葬送に際して破棄することはできない。

だが、葬儀を実際に執り行うのはアメン神官団。

さらに今後のためにも彼らの機嫌を損ねるのは得策ではない。

そこで、よく見える部分だけアメンの名を含むようにした。


つまり、埋葬に際し、アメン神官に配慮して側近たちが取り繕いをおこなった。


この玉座の様子を考えれば、これは非常に説得力がある。


ただし、これには部分的に別の提案もある。

アクエンアテンはアメン信仰を弾圧したが、アメン神官団が排除に動いたのは、アメン信仰を抑え込んだアクエンアテンのみ。

本来は弱小宗教の崇拝対象でしかないアテン神など眼中になく、その子ツタンカーテンも名をツタンカーメンと変えれば公的には自身の宗教の配下に見えるので見えぬ場所にアテンがあっても問題なしとした。


もうひとつは、ある意味文学的ともいえる理由である。

アテン神の名を残したまま多くの埋葬品に墓に運び込んだのは彼を埋葬した者たちの明確な目的を持った意志。

ただし、こちらもその意図について両極端なふたつの意見がある。


ツタンカーメンともに目障りなアテン神そのものを封印してしまう。

信仰していたアテン神をツタンカーメンとともに来世に送り届ける。


どちらを選ぶにしても物語の設定としては非常に良いし、主張する者の文才または弁舌能力によっては十分に信じさせることができる。

ただし、前者を正解として場合、「それが正しければそもそも書き換えなど不要ではないか」という反論に対して答えに窮すことになるのだが。


とりあえず第一段階の仮説を出したところでそのどちらの側につくべきか?


答えは見栄えはよくないが取り繕った説と選ぶ。


と言っても、完全にそれを支持しているわけではない。

その主張に則った場合、その後半部分の記述と、後の王たちのツタンカーメンに対する扱いに反故が生じるから。


この点については、パーツが足りないままパズルを完成させようとするもので、どの意見にも必ず穴ができる。

だから、これにあまりこだわると肝心な部分に辿り着かなくなる。

残念だが、ここは脇に置き、先に進むことが賢明だ。


さて、次のテーマはこれ。

その書き換えがツタンカーメンの改名直後か、埋葬直前だったのか?


これについて考えられるストーリーは次のふたつ。


ツタンカーテンからツタンカーメンへの改名直後に黄金の玉座に記された名前の書き換えがおこなわれた。

書き換えが埋葬直前だった。


王と王妃の名前の書き換え、ネフェルネフェルウアテンからの書き換え、その両方の作業の雑さを見た場合、後者が正しいように思えるのだが、そうなるとある問題が起こる。

つまり、それまではアテン入りの名前が残る玉座をツタンカーメンは使い続けたということになる。

当然王のもとにはアメン神官たちをやって来ていただろう。

彼らはどうしていたのか?


アメン神官はそれについて問うことはなかった。

生前王とその側近が頑なに書き換えを拒んだ。


最終的に形ばかりの書き換えがおこなわれたということは選択されるのは後者と思われる。

そして、即位直後の王は非常に幼かったことを考えれば、アメン神官団のクレームを抑え込んだのは側近、つまりアイとなる。

世間的には評判が悪く、自身の野心のためにツタンカーメンを手にかけたなどともいわれるアイであるが、実は王家に対する忠誠心が高くアメン神官団を黙らせるほど力を持っていたということになる。

そして、アイの死後、次王ホルエムヘブによって、アクエンアテンとともに、ツタンカーメンやアイの建造物が軒並み破壊されたことから考えれば、エジプトの将来を憂う一途な軍人と描かれることが多いホルエムヘブはアメン神官にとって御しやすい王位に執着しただけのポンコツに見えてくるのは不思議なことである。


さて、ここまで語ったところで、この部分について尋ねよう。

あなたはどう考えるか?


ちなみに私はこの問い単独であれば書き換えは葬儀直前と考えている。

それはその後に起こった事実との整合性を検討材料に加えた結果である。


そして、さらに一歩進み、そこから導かれること。

それは、ツタンカーメンはアテン信仰と完全に決別していなかった。

それはアテンの名を含むツタンカーテンの名が入った玉座を使い続けたから。

もちろんそれは王の後見役であるアイについても同じこと。


そして、それはツタンカーメンが離れたアマルナがすぐにゴーストタウン化したという専門家諸君の見解に反し、どこぞの名探偵張りにノーだった可能性を示すものでもある。


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