サラさん、強ぇ...
サラさん曰くのじゃれ合いを経て冷静さを取り戻し、
顔の赤みも引いたセルは目の前でコホンと一息。
「いくら俺が天使のいろはを教えたからってお前がまだ未熟なことには変わりねぇ。
明日からは実戦でビシバシしごいてくからな、覚悟しとけよ。」
以前であれば顔を真っ青にしていたようなその言葉も
今になってしまえば愛のある言葉だったんだと思えてしまう。
不思議なものだ。
「今日の用事は終わりだ。
後は自由行動とする。サラ、こいつに着いて行ってやれ。」
「了解しました。」
いつの間にか僕ん背後に控えていたサラさんが答える。
でも…セルがついて来てくれたらいいんじゃ。
「俺だって暇じゃねぇ。
やらにゃならん事すっぽかしてお前連れて来たんだ。
明日に皺寄せでも来たらたまったもんじゃねぇよ。」
そう言うと彼女は周囲に風を巻き起こし、
空の彼方へと消えていってしまった。
「それではセルフィエル様も行かれたことですし、
エデンの園を案内いたしますね。
何処か興味のある所はありますか?」
いざ興味があるトコって言われてもなぁ…
僕、ここの事詳しく知らないし。
どこに行くべきかセルに聞いとくべきだった…
そう考えた途端、頭の中でセルが「そこまで俺に頼んじゃねぇ」と叫ぶ。
うわ、本人いたら絶対言ってたよ…
でも今いるのはサラさんだし聞いてみよ。
「どこかおすすめの場所ってありますか?」
「おすすめの場所ですか…」
◇◇◇
「ここなんていかがでしょうか?」
サラさんが連れて来てくれたのは大きな湖。
山に囲まれた谷に形成されたそれは何処までも透明で澄み渡っている。
谷を抜け、水面を駆ける涼しい風に誘われ、岸辺に足を運ぶ。
「冷たい。」
足を付けただけで全身が涼しくなるような清々しい感覚。
流石は楽園、エデンの園。
地上ではこんな体験、とてもじゃないけどできない。
(マギアが聞いたら、「来たい来たい」ってぐずるだろうなぁ…)
そんな事を考えながら岸辺で足をぱちゃぱ茶していたその時だった。
何の前触れもなく湖が割け、
僕なんか丸の無できそうなくらい大きな魚が跳ねる。
その牙の向かう先…僕!?
「危ないッ!!」
あとわずかでその歯が僕をかみ砕こうとした矢先、
物理法則を無視して横方向に弾けるようにその巨躯が飛ぶ。
目の前に着地した彼女はさっと髪を払い、短く息を吐いた。
「サラさん、かっけぇ…」
◇◇◇
「ここなんていかがでしょう?」
サラさんが連れて来てくれたのははるか天にまで届きそうな高さの山々。
こんなところもあるんだ…
空気を吸えば胸いっぱいに広がる新緑の香り。
さっきとはまた違う楽園っぽさがあって、こっちもいい。
「ちょっと行ってきていいですか?」
「えぇもちろん。」
サラさんにしっかり許可もとったし、
さっきみたいに危ない奴がいるわけでもないだろ。
と、まぁ僕は思ってた。思ってたんだけどね…
「どおしてこうなるのぉぉぉ!?」
藪をつついてコンニチハした巨大な蛇に追い回されている。
そりゃさ、僕だって藪つついたのは悪いと思うけどさぁ何で毎回こういう目に遭うの?
ここ楽園だよね!?
そろそろ冗談も言えなくなってきた。
サラさんはサラさんで遠くで僕のこと見てるし…
彼女は天然なのか、それとも単にぼけーっとしてるのか分かんないとあるからなって…
「うわっと」
うねらせた体がクリティカルヒットしそうになるも無事回避。
どうにか体が慣れてきたおかげで回避も楽になってきた。
慣れちゃいけないんだろうけどもさ…
「天誅!!」
突如、鈍い音が響き渡ったかと思いきや
気付けば蛇の頭が地面に埋まっている。
スカートについた汚れを払うサラさん、マジかっけぇ…
◇◇◇
「きれいな場所だったけど何かすごいのいっぱいいましたね。」
「あなた様にはアレを倒せるほどになっていただきたく…」
つまりは僕の訓練のためにあそこに連れてったってこと?
たしかにセルならやりそうだ。
それ即ちサラさんも平気な顔してやる可能性があるということ。
この人の場合、天然が炸裂したのか
それともセルの何かをくみ取ったのかは謎ではあるものの
まぁ何かあるんだろうことは分かった。
もしかしたら明日からのセルの特訓に何か関係あるかもしれないね。
<次回予告>
みなさま、こんにちは。サラでございます。
本日はわたくしの出番(?)ということですので
ほんの少しの時間、お付き合いくださいませ。
ですがしかし何を話せばよろしいのか...
これをこなされたセルフィエル様には頭が上がりません。
セルフィエル様のしごきが始まるようです。
ガブリエル様には是非とも頑張っていただきたく...
次回、「特訓」
あのお方には加減というものを知っていただきたいものです...




