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竜人族ジェリアの魔法

「いやぁ、まさか格納魔法にあんな使い方があったとはな。

お手柄だ、少女。君はすごい才能の原石かもしれないぞ。」


そんなことを言ってるルーナ様はさておき…


「僕のことで怒ってくれたのは嬉しいけど

もうちょっと周りに配慮しなさい。」


「ごめんね、リリィ…」


ルイはシュンとしてしまった。

心なしか尻尾にも元気がない。


言いすぎたか…


「まぁまぁ君たちもそう喧嘩せずに。

まずはお互いに称え合うのが普通だろう。」


そう言うとルーナ様はルイの手を握って

竜人族の子の元へ連れて行った。


2人を真正面に立たせると

両者の手を握らせる。


「君たち2人とも、よくやった。

この模擬試合、両者引き分けとする。」


ルイは機嫌悪そうな顔はしてないけど…

その一方で竜人族の子はいささか不満げなご様子で…


ふいに竜人族(ドラゴノイド)の子が口を開く。


「私の名前はジェリア、竜人族(ドラゴノイド)のジェリアよ。

言っとくけどあんたを認めたわけじゃないから!!」


そう言うと僕の方にも指をさす。


「さっき邪魔したの、あんたでしょ?

あんたもいつか必ず倒してやるわ!!」


そう言い捨てて、去っていく。

残ったのは意味を理解して地団駄踏んでるルイだけ。


「いいじゃないか、いいじゃないか。

君たち、青春じゃないか!!」


結局、全ての元凶であり、

最終的に全てを丸く収めてくれたルーナ様が笑ってる。


責めたらいいのか、お礼を言えばいいのか…


「そうですね、では私たち大人は

子供たちの青春を邪魔するわけにはいきませんね。」


ルーナ様が固まる。


その顔が油の切れた機械人形のように

ぎこちなく後ろを向く。


「わ、私はここに来ると事前に、い、言ったはずだが…」


「えぇ、刻限を過ぎております。」


そこにいたのは

ルーナ様からハルトと呼ばれていた騎士。

「帰りますよ」と言って門を開く。

そこには馬が2頭。


「頑張れよ、少女たちぃ~」なんて言い残して

引きずられ、馬に乗せられ、帰っていった。


…嵐のような人だったな。


◇◇◇


ルーナ様の訪問の後も

僕とルイの魔法の勉強は続いた。


正直言って、彼女のレベルは僕と同じくらいにまでなった。

格闘センスと合わせればもう何も言うことはない。

それでも教えを乞うてくるのは

この娘が僕になついてくれてる証拠なんだろう。


そしてあれから変わったことが1つ。


樹の影からこちらを「じとぉー」っと眺めている少女。


たしか…ジェリア?、だったっけ…?


気付いたルイが耳と尻尾を逆立てて

威嚇している。


もう終わったことだしさ、そんなに威嚇せずに…


「ルイ、怒らない怒らない。」


「でもルイ、あの子はルイのことバカにしたんだよ?」


「それでも喧嘩はしちゃダメ。」


「はぁーい」と気の抜けるような返事をして

ルイは再び読書に戻った。


まだ視線を感じる…

ルイも気にしないようにはしてるけど

尻尾がそわそわ落ち着きなく動いてる。


そろそろ限界っぽいな…


「えっと、ジェリアだっけ?何か用?」


「な、何の用よ!?」


いや、それはこっちのセリフなんだけど。


聞けばどうやら僕とルイの秘密を探っているとのこと。

「あんたらの強さの秘密を見つけてやるわ」なんて意気込んでおられる。


竜人族(ドラゴノイド)について僕の知ってる情報は


たしか…

竜の力を使えて、プライドが高くて、でもそれ相応の強さがあって、

亜人族の中で最も強い種族のうちの1つだということくらい。


その竜人族の子が今僕の目の前にいるんだけど


怖いんだよ。板挟みって。


ルイとジェリアの間の火花が止まらない。


で、ジェリアは僕の呼んでる本を横から覗き込んで、

ルイがそれを横から睨む。

僕は気にしないふりしてるものの、やっぱり気が散る。


見事な三角構成の出来上がり。


ルイは今すぐにでも突っかかりたいんだろうけど

僕が諫めたから大人しくしてくれてる。


それにしてもこの感じ、なんかデジャブがあるような…


「この本、なんて書いてるのかしら?」


やっぱりだぁぁぁぁ。


これはもう1回、教えるコースからやり直しかな?


そこからまた数か月、

今度はジェリアが言葉を学び始めた。


それを見た先生は僕が古語ができることに相変わらず疑問を感じたみたいだが

僕が元人間だったっていうのは誰にも言っちゃいけない秘密だからね。


勉強会はルイも交えて進んだ。


といってもこの2人を一緒にすると

何かと喧嘩が起きるから僕も一緒にいたわけなんだが。


(それにしてもさすがは竜人族、物覚えが速いな。)


ルイも言葉の習得は早かったが

ジェリアはそれ以上だった。


古来より、竜は非常に賢い生き物と聞く。

その竜に関係する竜人族(ドラゴノイド)も同じなんだろうか?


何処かで見たことのある光景もう1回。


目の前に立ったジェリアが

テーブルに乗せた天術目録を眺めながら

手のひらを前に出している。


「これでいいのかしら?リリィ。

詠唱は何だったかしら?えっと『治癒(ヒール)』でいいのかしら?」


そう言いながらも、恐らくこっちには聞く気もないんだろう。

その背中にあふれる自信、

それこそが彼女の強さを物語っている。


治癒(ヒール)」と唱えた途端、魔法陣が展開した。

展開したのだが…


その大きさが問題だった。


通報ならば展開する魔法陣の大きさは

たかが知れている。


でも、でもだ。


ジェリアが展開した魔法陣は

孤児院を覆いつくすほどのものだった。


「ちょ、ちょっと待って。『消却(エリミネーション)』!!」


何かおかしい、制止をかける。

でも間に合わなかった。


というより押し切られた感じ。


治癒(ヒール)』が発動した。


温かい光が空を覆う。

見た感じ、マズい感じじゃなさそうだけど…


光は空を覆いつくし、

そして消える。


走る、走る、院の扉を蹴り開ける。


「大丈夫ですか!?」


院の中では先生が子どもたちを抱えて震えていた。


「な、何があったの?先生びっくりしたよ!?」


「それはこの子が説明しますから。」


一緒に連れてきた(恐らく原因である)ジェリアを前へ突き出した。

さっきから変わらずツンとしている辺り

まぁ大体のことは理解ないんだろう。


「私が魔法を使った、そしたら予想以上に大きくなった。それだけよ。」


はぁぁぁぁぁ


この子は、ジェリアは、

態度を崩さない。


「まぁそういうことなんで、特に害はないと思います。」


そこからはまぁ大変、

あの『治癒』のおかげで孤児院の子供たちの病気が治ったりと

大騒ぎがあったそうな。


通常、『治癒(ヒール)』は対個人に対して使うものなのだが、

ジェリアの『治癒(ヒール)』は対多人数に対して用いれるほど強力であった。


と推測される。


あのデタラメ竜人族(ドラゴノイド)の力、いったいどこから出てるのやら…


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