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北の都と即刻降りかかる災難

それはある日の朝のことだった。

おかみさんが申し訳なさそうにしている。


「どうしたんですか?」


「それがね、北の都までの配達が出ちまったんだよ。

私も旦那もあんな遠くにゃ行けないんだよ。

だからもうリリちゃんに頼むしかないんだけども…」


たしかにここ、王都シルフォリアから

北の都まで行くとなるとかなり遠くなる。

でもそれは人間の場合の話。今の僕ならすぐに行けるだろう。


マギアは相変わらず事務仕事が忙しそうだし、

ルロイは最近は王都への荷物の搬入に駆り出されている。


「分かりました、おかみさん。じゃあ僕が行ってきますね。」



確認すれば北の都への配達は1件、

それに配達物も便箋1枚だけだった。


それにしても便箋一枚か…

たしかに北の都と言えばここから手紙を出そうなんて人はほとんどいない。

その理由はそのあまりの遠さ、

馬車を使ってもどれくらいかかるか想像もつかない。


最近、王都に手紙を爆速で届ける郵便屋の噂が流れ始めた。

誰が流したのやらそれはあっという間に広まっていき、

今こうして僕の目の前に一枚の便箋が鎮座することになったというわけだ。


王都からの出都許可はすでに出ている。

僕の逃げ道は防がれてしまっている。


「じゃあ行ってきますね。」


「あぁそうだ!!ついでにゆっくりしてきな」


そう言って思い出したように渡されたのは一枚の紙。

見れば休暇申請書と書いてある。


ナニコレ?


前までこんなのなかったはずなんだけど…

どうしたんだろ…


「私が作成しました。」


答えたのは相変わらず机に座ったままひたすらに手を動かし続けるマギア。

人の心を勝手に読むなとあれほど…

でも確かにルロイがこんなの作るわけないし、

作るとしたらマギアしかありえないか。


「で?これ何なの?」


「それは休暇申請書です。最近リリィがお疲れのようでしたので

私があなたに代わって発行しておきました。

休暇を私に代わって満喫してきてください。」


彼女はひたすらペンで書類に書き物をし、

印鑑を押しながら喋り続けるマギアからは羨望の念を感じた…ような気がした。

今となってはマギアも郵便屋の立派な戦力、

それ故に回ってくる仕事も多くなっている。


そんな間を縫って僕の心配をしてくれたんだろう。

なんてできた子なんだ…


「その代わりと言ってはなんですがお土産を買ってきてください。

何か北の都を感じられるものがいいですね。」


「お、おぅ…」


仕事中であるため顔はこちらに向けられてはいないものの、

言い様もない程の覇気を感じたのは気のせいじゃないハズ。

その証拠にルロイも一瞬ぶるっと身を震わせた。


繁忙期のマギアのためにも何か美味しいものでも買って来よう。


◇◇◇


「許可証は持ったかい?手紙は持ったかい?忘れ物は無いかい?」


「心配しすぎですよ、おかみさん。

何度も確認したんで大丈夫ですよ。」


たわいもない会話をして郵便屋をあとにする。

朝早いというのにマギアもルロイも見送ってくれた。

今回は僕一人。

ルロイは王都への物資の搬入が、

マギアは最近は騎士団の仕事も手伝っているみたいで今回はパス。


例の検問兵に出都の許可証を見せて門をくぐる。

今度こそズルはしてないからね。


そして見慣れた丘までたどり着くと

人がいないことを確認して…


次元跳躍(バドザスト)


あれから何処の誰とは言わないが、

教えろとせがむ冒険者のせいでかなり使い勝手がよくなった。


具体的に言うならば視界に入らなくとも

場所さえ認識していれば自由に出口を指定できるようになったのだ。

これも何処ぞの冒険者(竜人族のJ)のおかげかな…


地図であらかじめ認識しておいた北の都。

どうか無事に着きますように…


◇◇◇


うぅ、肌寒い…

天使になればマシになると思ってた。


着いた先は無事北の都。その城壁の上。

空はどんよりと曇り

日が差してない分、刺すような冷気が服を通り越して体を刺激する。


配達用の服はある程度は温かくできてるんだけど

やっぱり王都とは気候が違うんだな。


無事に北の都の城壁の上に出ることができた。

検問通ってもいいんだけど、そうしたら街中で翼も出せなくなるし…


やっぱり城壁が一番。


えぇっと、配達先の住所は…?



その時感じた圧倒的な威圧感。

体の全ての細胞が硬直させられるような重圧が

突風と共に僕の体に襲いかかる。


無意識のうちに飛びのいていた。


「天使ってのは互いに不干渉がお約束なんじゃねぇのか?」


その声は天から降ってくる。


まさか!?

赤髪に純白の翼、頭上で輝く金の輪。


天使だった。


「何しに来たかは知らねぇが、

そっちがその気ならこっちだってやることやらしてもらうからなぁ」


◇◇◇


「なんでお前が俺の加護領域に来てんだよっ!!」


その声と共に接近した天使はレイピアを突き出す。

あとコンマ数秒遅れた時点で目玉一つ失うところだった。

なんとか間一髪で避けたけど人間だったら反応できずに死んでた。

確実に頭貫かれてた。


「女神様、どういうことですかコレ!?」


聞いても答えが返ってこない。

さてはあの人、まだ寝てるな。


「さてはあの女神、勝手に席埋めやがったな。

埋める時は一言声掛けろって言ったはずなのによ…」


どうやら戦闘は避けられないみたいだ。

仕方ないな…


翼を顕現させた。

ただこれだけでどうにか対抗できるようにも思えない。


とりあえず最悪の結末だけは回避する!!


「へっ、どこまでやれるか試してやるよ。」


「やらなきゃいけないこと(配達)が残ってるんで

こんなところで止まるわけにはいかないんです。」


目の前の天使が薄く微笑んだ瞬間、

姿が消える。


(ヤバイっ)


空中に咲き誇るユリの花が剣を止めた。

しかしそれも束の間、圧倒的な力の前に花は呆気なく散っていく。

さっきの一撃で分かった。


格が違いすぎる。


同じ天使を名乗ることすらおこがましく思えてしまうほどの力の差。

まさに天と地ほどの差をひしひしと感じさせられる。


「へぇ、防ぐかよ。

新米にしちゃなかなかやるんじゃねぇか?」


へぇへぇ、さいですか。

アンタがケタ違いなお陰でこっちは褒められてる気分じゃないんですよ


加護領域というのが一体何のことやらさっぱり分からないが

この天使、一体何をどう勘違いしたのか、

どうやら僕のことを敵認識しているらしい。


仕事開始早々ハプニングとは…

それも迷子とか人探しとかならまだしも殺される一歩手前なんて誰が想像できただろう?

そんなハプニング想像したくもないね。


今はどうにかして逃げることが優先、

時間の猶予ができてから女神様に事の真相を聞く方が早いだろう。


召喚(サモン)!!」


城壁に白いユリの花が咲き乱れる。

そこから舞い散る花びら。

その数は徐々に数を増やしていき、あっという間に一帯を煙幕のようにして覆い隠した。


この隙におさらばするとしよう。

願わくば二度とこんな狂戦士に出会いませんように。

僕の中の狂戦士ランキング不動の一位だよ、ホント…


◇◇◇


「…あの感覚、どこか懐かしい感じ

それに俺の一撃を止められるだけの力、

いったいどれだけの数の人間を加護してやがんだ?」


花びらが散っていき、ユリの花も消えた城壁の上で天使はつぶやく。

彼女の見知った雰囲気、

しかし当の本人はその昔に魔族との戦いで存在ごと消滅したはず。


「となると、あの女神の気まぐれか…

ふざけんなよ…」


そういうやいなや天使の姿が消える。

城壁の上に残るは数輪の散りかけの花だけだった


<次回予告>

こんにちは、リリィです。

北の都に着いたと思ったら、いきなり襲われて...

一体全体僕が何したって言うのさ...


とりあえず逃げきれたみたいだけど

これからどうなるのか不安だなぁ...


次回、「大天使セルフィエル」

必ず見てくださいね!!

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