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不確定で不安定な未来へ


気付けばそこは見たことのある白い空間。

ふわふわと浮かんで欠伸をする女神様。


「ここに来たってことは、上手くいかなかったんですね…

分かりました。いっそ一思いにやってください。」


恐らくマギアは助けられた。

でもそれ以外の所で犠牲が出たんだろう。


大見えきったのに情けない。

はぁ…


「マギアはどうなりましたか?

元に戻りましたか?」


最後に心残りがあるとすれば彼女のことだなぁ。

元に戻ったんだろうか、それにこれからうまくやっていけるんだろうか…


女神様は僕をじっと見つめたままだ。

そうしてどれくらい時間が経ったんだろう。


女神様がため息を吐いた…ってため息!?


「あなたねぇ、何を勝手に勘違いしてるのかしら…

あのね、あなた悪い方向に考えすぎ。」


だって…僕がもう一回ここに来たってことは

没収→お葬式の流れじゃないの…


「合格。誰一人として死んでないわ。

これからもよろしく頼むわよ。」


よかったぁぁぁぁぁぁぁ…


「それと、私が力貸したお礼くらい返しなさいよ!!

そうね酒よ、酒がいいわ。

そうよ、そうしなさい、それがいいわ。」


まくし立てる女神様、

この人が一応僕に力を貸してくれた神様…


全員無事で嬉しいっていうか、

この落差で何と言うか肩の力が抜けたというか…


「これからもよろしくお願いしますね。」


女神様がサムズアップ。

にぃっと笑った女神様の顔は美しかった。


◇◇◇


魔法陣から「ペッ」とはじき出され

元いたところへ戻る。


「マギア!!」


周辺に肉の断片が散らばったその場所の中央で

マギアは倒れていた。


胸に耳を当てると心音が聞こえる。

ただ意識は戻っていない。


「マギア、マギア!!」


暴走の原因は完全に取り除いたはず、

女神様も力を貸してくれたんだからそこは間違いないはずだ。


それでも彼女は目を開けない。


「マギア、マギア、

起きてよ…早く.

このままなんてヤダよ、ヤダよ。」


必死に叫ぶも聞こえているかどうかも分からない。

ただ時間だけが過ぎていって涙も枯れてしまった。


「ねぇマギアはこれからどう生きていったのかな?

僕がその未来を奪っちゃったのかな?

どう生きていきたかったの…」


「未来の事項は非常に不確定であり、

語ったところで意味がないことを主張します。」


問いかけるも答えは帰ってこない…はずだった。

こうなってくれることを少しでも期待してた自分がいたことも否めないが…


「ホンット空気読めないなぁ…」


マギアの目が開いた。

その目のどこにも先ほどまでの虚ろさはない。


「空気は透明且つ無味無臭です。

観測することはできません。

ましてや読むなどということはできません。

少しは頭、使ってください。」


「よかっだぁぁぁ、死んでゃっかとおぼったぁぁぁぁ。」


枯れてなかったな、涙腺。


気付けば周りには騎士団の人たちが集まっていた。

聞くところによると

ここ一帯の住人を逃がしてくれていたそうな。


そのお陰で全員助けられた。

マギアもここの住む人々も。


どうやら以前、ルーナ様がマギアに渡したペンダントが

警報のようなものの代わりとなって

彼女の暴走をいち早く察することができたと聞く。


そして気がかりなことが一つだけ。


マギアを襲撃した男の行方がついぞつかめていないこと。

あの男…魔法はおろかマギアの制圧駆動さえも掠りさえしなかった。

圧倒的な身体能力かそれとも何か魔法を使っていたのか…

何者なんだ。


男についても騎士団に報告し、

ルーナ様を始めとした騎士団の面々は調査を約束してくれた。


それにしても一番ドキッとしたのは


「錬成人間の彼女が暴走している際に

何か異様な霊気を感じたんだが少女、君は何か知らないか?」

との問いだった。


「それ、恐らく僕です。」と言えるわけもなく、

ただ「そうなんですか…ははは…」としか返せない。


この裏で女神様から

「あなた絶対に余計なこと言うんじゃないわよ。」と圧力かけられてたのはまた別の話。


◇◇◇


「これからどうするの?」


事後処理と銘打った騎士団本部での事情聴取から解放された

僕とマギアは並んで家路につく。


「未来の事項は非常に不確定であり、

語ったところで意味がないことを主張します。」


「じゃなくてさ、君はどうしたいの?」


いつかと同じ問い、

この子はこれからのたくさんの困難に立ち向かっていくことになるんだろう。


でも大丈夫だ。

根拠はない、今のマギアを見ているとそんな気がした。


「聞いていましたか?」


「ごめんなさい、聞いてませんでした!!」


どうやらマギアは何か僕に話していたよう様子。

考え事していて全く聞こえてなかった。


「話を聞かないということは

私に関心がないという認識でよろしいでしょうか?

いえ、そうに違いありません。

私は怒りました、ぷんすかぷん。」


「なにそれ、ぷんすかぷんって…

それ実際に言う人いないよ…」


そう指摘しながらも徐々にこみ上げる笑いを抑えきれなくなってくる。

そしてついに決壊した。


「なっ!?」


そのびっくりしたような顔が

また見れたことが何より嬉しいのかもしれない。


「私はあなたと、リリィとこうやって過ごしていきたい。

一緒にいたい…ダメでしょうか…?」


「未来の事項は非常に不確定であり、

語ったところで意味がないんじゃないの?」


その言葉にマギアはふっと息を吐き、空を見上げる。


「私が、あなたが紡ぐ未来を見たくなりました。

それが理由ではいけませんか?」


涙がこぼれる。


その涙はマギアがいい方向へ変わったことに対してなのか、

それともこうやってまたマギアと変わらず軽口叩けることに対してか、

どっちかは分からない。


でも大丈夫。


その答えはこれから一緒に見つけていけばいいから。


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