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責める相手
「サイッチごめんね。」
フミタは謝った。自分の判断ミスのせいでサイチロウに辛い思いをさせたからだ。
サイチロウは返事せず、ただヒクヒクと泣いた。ボロボロと溢れる涙を手の甲で拭い、止まらない鼻水をズルズルと啜った。
フミタを責めるつもりはなかった。しかし自分を責めたくもなかった。もちろん監督を責めることは出来なかった。大人を責めることは母親から厳に禁じられていた。つまり誰も責められる相手がいなかった。泣くことしか出来なかった。
フミタはどう慰めていいかわからず、ただ隣にいた。サイチロウの隣で立ち尽くした。




