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引き寄せの法則
全ての練習が終わるまで監督のムラヤマはフミタたちの元に戻ってこなかった。忘れていたのか放っておかれたのか、とにかく練習後のストレッチ体操が始まってようやくムラヤマはフミタたちの元にやってきた。
「サイチロウはどうだフミタ?」
サイチロウとフミタの距離が近すぎることを怪訝に思いながらムラヤマは声をかけた。
「上手くなってきてます!」
フミタはやたら大声で自信ありげに答えた。
「そうか。やったなサイチロウ。」
ムラヤマはサイチロウの肩をバンバンと叩いた。サイチロウはオドオドと下を向いて苦笑いした。
フミタに自信などなかった。サイチロウが上手くなっているかどうか今の練習では測りようがなかった。しかしだからこそ大声で答えたのだ。
「自信がない時こそ声を張れ」
派遣社員の父親の言葉だ。
「"引き寄せの法則"だ。真実は大声に引き寄せられる」
派遣社員の父親がやたら大声で言っていた。その手には『夢をかなえる77つの〜』という啓発本が握られていた。




