前へ目次 次へ 58/239 ノーアドバイス 助走はつけず、ボールの黒い五角形にゆっくりとインフロントを当てる。サイチロウはそんなキックをひたすらに繰り返した。 フミタは「いいよ」とか「そんな感じ」とか、そんなような声しかかけなかった。アドバイスらしいアドバイスは何もしなかった。 それでいいのか悪いのか自分でもわからなかった。でも今はそれでいいような気がした。今はまだサイチロウが上達しなくても構わないように思った。 ただサイチロウにサッカーを嫌いになって欲しくなかった。それだけを願った。