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五角形
サイチロウはフミタにぶつけないようごく弱い力でキックした。ボールはぼてぼてとフミタの足元に転がった。
「いいよ。そんな感じだよ。ボールと当たるところに集中して。もう一回ね。」
フミタはキックで返さずに手渡しでサイチロウにボールを返した。それになんの意味があるのか自分でもわからなかったが、なんとなくそうした。
ボールを受け取ったサイチロウは大きく頷き、ボールを足元に置いた。少しでもヒットする場所がわかりやすいよう、ボールの黒い五角形部分を手前に向けた。
サイチロウはその五角形を睨みつけ、そして助走はつけずに右足インフロント(親指付け根)でごくゆっくりとキックした。
ボールはフワリと浮かび上がり、目の前のフミタの膝あたりへ飛んだ。
「いいね。そんな感じだよ。もう一回ね。」
フミタはまた手渡しでサイチロウにボールを返した。




