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サイチロウへのスパルタ指導

「キャプテンがそんなんでどうする!」


ムラヤマの怒号が響いた。隣でサイチロウが肩を震わせていた。その目には限界一杯まで涙が蓄えられていた。


ゴールキックの練習であった。サイチロウのあまりに不安定なそれを何とかするべくいよいよ指導に熱が入っているのだ。


「もう一回。集中しろ。力を抜け。」


サイチロウは足元のボールから2歩3歩と距離を取った。そしてボールに集中した。穴があきそうなほどの熱視線でボールを見つめた。


そうして走った。そして力の限りでボールを蹴った。


ボテボテボテ。。


失敗。ボールが浮かない。勢いがない。


「力を抜けって!ああ!」


吐き捨ててムラヤマはため息をついた。わざとらしい大きなため息だ。


それをキッカケにサイチロウの涙が決壊した。ボロボロとそれがこぼれ落ちた。そうして嗚咽が漏れた。堪えても堪えてもどうしてもそれが止められなかった。


サイチロウの向かいでボテボテボールを受け止めたフミタは、少しの間を置いてから出来るだけゆっくりとそれを蹴り返した。


フミタは考えていた。


(あんな風に怒られて力を抜けるわけない。サイッチかわいそうに。)


(監督ってやっぱ給料泥棒なのかな?)


(監督ってまさか、どこかの会社から派遣されて来たのかな?派遣社員なのかな?)


フミタはブルブルと頭を振った。


(関係ない。派遣だろうと何だろうと、あの教え方は正しいと思えない。)


フミタはサイチロウに目をやった。歯を食いしばって嗚咽を我慢しながらサイチロウは向かって来たボールをトラップした。


(頑張れサイッチ!)


フミタは心で精一杯のエールを贈った。

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