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給料泥棒
「おじゃましました!」
子供達はそれぞれに大声で言ってシシマルの家を後にした。練習開始時間はギリギリに迫っていた。
「ヤバいよ。ムラヤマ監督に怒られるよ。」
大急ぎで自転車に跨りつつシシマルが言った。
「最近なんか厳しいんだよね監督。そうじゃない?」
サイチロウはそう言って真っ先に自転車で走り出した。
「アレでしょ。大会が近いからさ、ピリピリ感出してるんだよ。やってる感だよ。」
ハナクソタベオ(タベオ)がサイチロウに続いた。
「"やってる感"って何?」
フミタがタベオを追いかけつつ聞いた。
「何もしてないのに何かしてる雰囲気を出すことだよ。」
「監督って何もしてないの?」
「オイラからすれば全然だね。あんなの監督って言わないよ。給料泥棒だよ。」
「"給料泥棒"って何?」
「お金を貰ってるのに何もしないことだよ。派遣社員みたいなもんだよ。」
言ってタベオは"しまった"とばかり盛大に鼻をすすった。そうして自転車を漕ぐスピードをグイと上げた。
フミタは何となく聞き取れたものの、きっと別なことを言ったんだろうと自らへ強引に言い聞かせた。




