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無音
「いるみたいですね。フミタ君。良かった。」
フミタの声は頭上から聞こえた。つまり2階だ。2階への階段は玄関のすぐ前、ゾゾらの目の前に伸びていた。
・・・
10秒経過。
20秒経過。30秒経過。
何も聞こえない。
「遅いな。」
タベオがこぼした。それ以上の言葉は出てこなかった。
1分経過。なんの音も聞こえない。かすかな物音すらもない。
タベオとゾゾは顔を見合わせた。何かを話したかった。気のまぎれる世間話を。
しかし言葉が出なかった。言葉を出せなかった。
その理由はわからなかった。言葉を出せない理由。
何かを感じ取っていた。幼い二人の本能が、声を出すことを拒んでいた。




