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「家が死ぬ」3/4
「家が死ぬ」3/4
校門を出て歩道橋を渡り、商店街へ入る三叉路を直進した次に、サンゴジュの生垣の大きなお屋敷があった。みんなは武家屋敷と言っていたが、特にお武家でもなければ江戸時代からあったわけでもない。ただ、何となくいかめしい雰囲気があって、僕たちは何となく行儀良くしながら一列縦隊で生垣のそばを歩いた。
機械部品の会社を起こして一代で結構な規模に育てた実業家のお屋敷という話だったが、今はもう無い。
いつだったかの夏休みの登校日の帰り、僕たちはふざけながら歩いていて、いつの間にかあのサンゴジュの生垣のところを通り過ぎていたことに気づいた。
あの何となくのいかめしい雰囲気は、その日は感じなかった。
休みが明けて二学期になると、なぜだろうか、僕たちだけではなく下級生もふざけながらその生垣のそばを歩いた。
後に調べてみると、やはりその夏休みの間だったらしいのだ、その機械部品の会社が大手と経営統合したのは。
その後、僕たちが中学を出る前に機械部品のブランド名は消え去り、お屋敷は整地されて数年間何も建てられなかった。