プロローグ:選択は決められていた
何故、その二つかと言うと装備に金がかからないからだ。
防具を無視したとしても、武器はそうはいかない。
剣を使うには剣が、槍を使うには槍がいるのは当たり前だ。
自作出来るならともかく、そうでないなら購入費用がかかる。
というか、ゲームのような世界になったと言っても、その全てがそうである訳でもない。
装備は消耗品だ。
特に刃物は刃こぼれがある。
適切に管理をしても、研ぐ度に少しづつ細く短くなっていくし、
そもそも、ダンジョンの中で武器を研ぐなど出来るはずもない。
実際に刀剣武器を装備する者は複数の武器を所持して、相手や武器の消耗度合いを見て、使い分けている。
ダンジョンに籠りきりかつ、少しでも素材を集めて金に変えないといけない一にとっては、
そんな武器を使う選択は出来なかった。
故に一はその身一つでも戦える『職業』でなければならなかった。
それが、『格闘家』と『魔法使い』の理由。
『格闘家』は多少の保護具は使用しているものの、
最悪、なくても拳の皮がずるむけになること覚悟すれば戦える。
『魔法使い』にしても、専用の装備がなくとも、魔法の発動は可能だ。
『世界と繋がった者』は、覚醒した時点で何らかの魔法が使えるようになる。
一の場合は単純な火の魔法だったが、拳を休ませたい時に重宝している。
とはいえ、魔法の発動に必要なⅯPの概念は当然あり、
レベル1の一には日に3発程度が限界ではあったのだが……