免疫弱者
「じゃあ、なんで箝口令なんか……」
「混乱を避けるため、というのが大きな理由です」
「混乱……この病気が?」
「はい、奇病というだけあって、この『ケース』と名のつく病にかかることは非常に稀です。
世界中合わせても、100人を少し超える程度、
『ケースE』に限れば2、30人というところです」
「……」
だとするなら、二葉は非常に運が悪かったことになる。
「通説として、『世界と繋がった者』でなくとも、
ダンジョンの発現以降、一般人の肉体であっても、
環境に適応できるように変化されたと言われています。
今回のような病に対する免疫力も、一般人にも備わっているということです」
「だったら、二葉は……」
「はい。しかしながら免疫力というのは個人差があり、
肉体が変化しきれなかったりして、
免疫力の弱い人間が『ケース』と呼ばれる病に罹るのです。
政府が情報を意図的に出さないようにしてるのは、
少数の免疫力が弱い人間のみが罹る病気のために混乱を引き起こしたくないからだとしています」
「それって、少数の人間のための対策をしたくないってことなんじゃないんですか?」
「……それは私にはわかりかねます」