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因果関係
看護師に連れられ、診察室に入ると、白衣を羽織った女性が座っていた。
「不動二葉さんの保護者の方ですね」
「あ、はい」
一は女医だと言うことに少し驚いた。
なんとなく、夜勤をするのだから男性だと先入観で考えていたのだ。
「初めまして、担当医の鈴鹿です」
「はい、不動二葉の兄です」
一はそう口にして、名前を名乗らないのは違和感があった。
しかし、この場面で必要なのは役割であって、名前ではないと思った。
「お忙しいようですし、夜も遅いので要件だけ伝えさせてもらいます」
「はい」
一はなんとなく鈴鹿の言葉に棘があるように感じた。
これまで、来れなかったことに鬱憤なり不満なりを抱いているのではないかと思った。
「ご両親からは不動二葉さんの病状について知らされたことは?」
「……ないですよ、ある訳ないじゃないですか」
一も一で苛立ちを覚えた。
時系列としては二葉の入院がまずあり、
一と二葉の両親の交通事故死、後に二葉が難病であることが発覚した。
そして、両親が他界した交通事故は、病院の帰りに起こった。
恐らくは、二葉の病状を知らされた後に事故は起こっていた。