75/146
営業
ーー
一は看護師の誘導に従い、後ろをついていくようにして歩いた。
医師がいるという診察室の場所を知らなかったから案内してもらっていたのだ。
「あの……ところでずっと外で待っていたんですか?」
「いえ、元々はお帰りの際にお声掛けしようと、受付にいました。
しかし、面会時間の終わりも近くなったので、時間が越えないよう病室の外で待たせてもらいました」
「そうですか……あの、担当医の人はどうしてこんな時間に?」
「たまたま、夜勤だったので……
しかし、以前から連絡は入れさせてもらっていましたが」
「え……そんな連絡いつに……」
「病院の名義でお手紙送らせてもらっています。
ご覧になられたことは?」
「……あれ、そうなんですか?覚えてないですね、すみません」
と、言いつつも心当たりはあった。
病院からだと気付かず、色々届くDMと一緒に捨ててしまったのではないか、と……
今時、家に届く郵便物は支払いの明細書以外は不要物だ。
大抵は読まずに燃えるゴミにしていたが……一はそれを少し改めることにした。