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そんな訳ない
どちらにしろ、言えることは一つだ。
「……別に、二葉のせいじゃない」
「え……」
必要に迫られた、その一因がないとは言えない。
しかし、夢破れたのはそれ以前の話だし、
必要に迫られなかったなら、一は自暴自棄なままだったかも知れない。
「だから、変なこと考えなくていい。
俺のことは俺が決めたことなんだから」
「……うん。ありがとう、お兄ちゃん」
ーー
ひとしきり話したところで面会時間が終わろうとしていた。
一は必ずまた来ると約束……は出来なかったが、意思を示して、病室をあとにした。
廊下に出たところで、暗い廊下で看護師が待っていた。
予想だにしていなかったことで、一はギョッとした。
「不動二葉さんのお兄様でいらっしゃいますね?」
「そ、そうですけど、なにか……?」
「先生からお話があります、お時間いただけますか?」
「え……」
一瞬、なんとか滞りなく払ってきた入院費用の催促か何かかと思ったが、医師からの話だというのならおおよそ予想がつく。
「妹のこと、身体のことですか?」
「はい」