夢失ったもの
『世界と繋がった者』の身体能力は、言葉通り人間離れしている。
一般人と同じステージでスポーツをすることは出来ない。
加えて、レベルアップでしかその身体能力が向上しない以上、
いくら身体を鍛えても意味はない。
もちろん、技術の向上は出来るが、そもそも生涯試合に出ることが出来ないのに、そこにどれだけの意味を見出せるというのか。
さらに、一は暫く『世界と繋がった者』であることを隠していた。
その状態で公式大会に参加すれば、後々バレた時に処罰の対象になる。
もしかしたら、部活をすることで『世界と繋がった者』であることを見破られるかも知れない。
だから、一は部活を辞めざるを得なかった。
それからの一は、暫く自暴自棄になっていた。
目標を見失い、色んなことへの興味を失って、
何をするでもなく、怠惰に過ごしていた。
……もし、両親が亡くならなければ、
必要に迫られなければ、
一はそのままだったかも知れない。
「……」
(余り……その頃のことは覚えていない。
それほどにもショックだったのに、忘れてしまった……)
それは自己防衛だった。
一は辛い現実を見たくないために、その辺りの記憶を封印していたのだ。