72/146
いつか見た夢
「俺ってそんなにスレてたか?」
「んー……というより、生活リズムが合ってなかったよね
お兄ちゃん、あの頃部活やってたでしょ、野球」
「ああ……」
一は以前は野球少年だったが、そのことでさえ忙しさで忘却していた。
「朝早かったし、夜遅くまで練習してて、家にいる時も眠ってばっかりだったし」
「そう……だったかな」
一は自分がそこまでの情熱を傾けていたのかと内心驚いていた。
その時の自分はそんなに打ち込んでいたのかと……
「……よかったの?」
「何が?」
「……気にしてないならいいけど」
「……」
あの頃の自分は夢の舞台だとか、意識していたのだろうか?
そして、その夢に挑戦する権利を投げ捨てて……と一は思ったところで、頭をぶんぶんと振った。
「そんなの『世界と繋がった』時点で、夢なんて追えなかったよ。もし、二葉が自分のせいだと思っているのなら、気のせいだどっちにしろ一年で野球なんて出来なくなっていた」
そう……『世界と繋がった者』はそうでない者と同じスポーツの場で競い合うことが出来ない。