71/146
一番近い他人
「アルバムか、わかった。
……他に何か必要なものとかはないのか?」
「大丈夫だよ」
「兄ちゃん、余裕出来たから大抵のものは買ってやれるけど……」
「そんなの気にしないでいいよ、アルバムが、写真があれば充分だし」
「そうか……」
何かしてあげたいと言う気持ちがあった。
それでも、二葉はどこまでも無欲だった。
「……あ。本とかもいらないのか?
普段、退屈じゃないか?」
「んー、あんまり考えたことないなぁ」
「考えたことないって、退屈かどうかをか?」
「もうここでの生活に慣れたしね」
「そんなものなのか?」
「私はね」
存外に妹は変わっているな、と一は思った。
それと同時に、そんな事も自分は知らなかったんだな、と感じた。
「もっと、二葉と話さないとな」
「?」
「いや、今まで兄妹だってのに会話が少なかったんだなって、思ってさ」
「んー、ま、仕方ないんじゃない?
お兄ちゃんが、中学生になった時、私と話さなくなったじゃん?」
「そうだったっけ……?」
「そうだよ、私覚えてるもん」