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彼女のために出来ること、出来ないこと
「……はは、そうだな」
努めて、何ら意味も持たさないように一は心がけた。
と、二葉は時計を気にした。
「時間、大丈夫?」
「え、あー……」
あまり、面会時間に余裕がない。
元々、時間からして日が沈んでからだったのに、
手続きと除菌に時間がかかった。
一としても、明日の活動を考えたら早めに帰って、休息をとったほうがいいというのもある。
それを感じとったのか、二葉はこんなことを口にした。
「次はいつ会えるのかな?」
「っーー」
言葉が詰まった。
約束出来ない。
元々、命の危険のある仕事だ。
レベルアップしたと言っても、借金返済のためには危険なダンジョンに潜る必要もあるだろう。
そんな中で、約束なんてーーーー
「約束、出来ない。
でも、また、近いうちに来れるようにするよ」
「……そっか」
二葉は寂しそうに笑った。
それを見て、一は何かを、何か言わなければならない気持ちになった。
「つ、次来た時にさ!」
「うん?」
「何か欲しいものとか、あるか?」
「え、んー……」
二葉は何かを思いつき、ぱっと表情が明るくなった。
「お父さんって、家族の写真アルバムしてたよね?
あれ、持ってきてくれる?」