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久方
ーー
少女は真っ白な病室にいた。
厳密に言えば、真っ白というのは比喩だ。
物があまりにもなさすぎる。
とは言え、免疫力の面からなるべく無菌状態にしなければならない結果、除菌と何か汚れがあればわかりやすいように白が基調になっている側面もある。
その病室への入室前、一は入念な消毒を受けた。
モンスターの血を浴びたので、シャワーを浴びてきたが、
そのことを看護師に述べると念入りに消毒される結果となった。
ふぅ……と、一は息を吐き、意を決して病室のドアをノックした。
「はい?」
扉越しに久しぶりに聞いた妹の声に動揺した。
これまで来れなかった引け目があった。
それでも、ここまで来て逃げ出すという選択肢はない。
なるべく平静を装い、口を開いた。
「二葉、入ってもいいか?」
「お兄ちゃん!?う、うん」
二葉もまた動揺しているようだった。
なんで、こんな関係になったのだろう、と後悔を覚えながらも一はドアを開けた。
「二葉、なかなか来れなくて悪いな」
つい、謝罪の声から入ってしまった。
二葉はベットから上半身を起き上がらせて、一を見ていた。
一の知る彼女の姿よりも、痩せていた。