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貧すれば鈍するというか
そんな一が、ミダスの森から大量の戦利品を持って来たのだから、担当者も動揺したのだろう。
しかし、そこは仕事である以上、正式に査定され、一はそれまでの一月分の稼ぎを超える額を受け取った。
内心、盗んだものだとか思われないかと不安だった一は問題なく売却が終わり安堵した。
帰り道、手にした金額を見ながら、一は考えた。
支払う額を考えれば、全くもって足りない。
しかし、生活をする上では充分、貧窮していた生活は脱する。
そう、生活費も家賃も困ることはない。
妹の入院費用だって……
「あ、そうだ」
一は時間を確認する。
面会時間はまだある。
「一応、余裕は出来たんだし、二葉に報告がてら顔を見に行かないとな」
日々に追われる中で、入院費用を捻出していたものの、なかなか妹のお見舞いには行けていなかった。
唯一の肉親として、一は心苦しくは思っていたが、どうしようもないことだと、自然とフタをしてしまっていた。
しかし、返済に追われるが、日々の生活にはメドがついたことで、多少なりとも現状を改善出来るし、しなければならないと一は考えた。