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締結
そこからはスムーズだった。
瑞葉は手慣れた様子で契約書を記し、
一はその内容を隅々まで確認すると、サインと血判を押した。
それで、契約は結ばれ、すぐに約束の瑞葉の暗示にかかる。
そして、飴玉のようなそれを手渡された。
(これを使えば……しかし、これが10億か……)
後悔の残滓はまだ残っている。
しかし、ここまでくればやるしかない。
例え、このアイテムを売っても10億には満たない。
レベルアップすることでしか、その対価を生み出せる方法はないのだ。
『レベルアップ可能アイテムです』
念押しのようにメッセージウインドウがそれが何なのかを教えてくれる。
交わした契約には、このアイテムでレベルアップ出来なかった場合、支払い義務は発生しない旨を追加して貰った。
瑞葉は不満気だったが、全てはレベルアップするという前提の元だ。
最低限、それを保証されなければ、契約も何もない。
(……逆に言えば、レベルアップの手前の経験値になるなら、支払い義務は発生しないのだろうか?)
「どうしたの?早く食べてよ」