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箸転がし
「あははははははっ!!」
「な、なんですか、急に……」
「だって……だって本当に必要経験値が、きゅ、きゅ、9億って……きゃははははは!」
箸が転がっても面白い年頃、なんて言葉もあるが、
一は酷く心外だった。
最初から言っていたことなのに、笑うとは。
「ば、ば、馬鹿じゃないの……9億って!!」
「……言い過ぎじゃないですか?」
「い、いや、ごめんごめん。不動くんに言ってるんじゃなくてさ……こんな設定した奴?神様か何かわかんないけど、こんな馬鹿なことするんだって……くふふふ、ふふ」
何を言っても、無駄かと、一は額に手を当ててため息を吐いた。
「これで、満足ですか?もういいですよね」
気分がいいはずもない。
いくら見た目が良かろうと、もう瑞葉と同じ空間にいたくなかった。
「ははははっ……はぁ……いや、ちょっと、待ってよ」
背を向けて去ろうとする、一の袖を瑞葉は掴んだ。
と、言っても指先で摘むような形だ。
「なんですか?ああ、パーティを抜けないといけないのか」
「ああ、うん、それはいいんだけどさ、ちょっと待ってよ」