35/146
表面上
「……」
じ……と、一は少女を見つめる。
どちらかと言えば、それは"観察"だった。
年は一よりも下に見える。
整った顔の……美少女だ。
もし、アイドルをしていると言われれば一は信じるだろう。
それでいて、ハイオークを一撃で吹き飛ばす実力……一とは次元の違う存在に見えた。
それでも……同じ人間で、同じ『世界と繋がった者』だ。
卑屈になるのも違うと、一は考えた。
「な、なに……?ずっと見つめちゃってさ」
少女のほうがたじろいでしまった。
「いや……いえ、助かりました。
自分の名は不動一です。
宜しければあなたの名前も教えてもらえますか?」
「え?……美咲瑞葉だけど」
「そうですか。
名前を呼んでお礼を言いたかったので、
ありがとう、美咲さん」
「は、はぁ、どうも……」
瑞葉は毒気を抜かれてしまった。
実のところ、瑞葉は玩具とまではいかなくとも、
何か面白いモノを見つけたのではないかと予感していた。
しかし、自分の嫌味や挑発に気付いてなおも、真っ直ぐに礼を言う一に、その予感は外れだったのではないかと感じ始めていた。