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薄ら笑い
「あ……え……?」
一は事態が飲み込めなかった。
それもそうだろう。
今、まさに自分の命を奪おうとしていたハイオーク。
そのハイオークが、突然爆ぜた……つまりは死んだ。
その僥倖に喜ぶよりも、戸惑いが来るのは人として当たり前の反射だろう。
そんな一の反応を見てか、離れた場所からニヤニヤと笑いながら、少女が歩いてきた。
「ごめーん、獲物奪っちゃったかな?」
「え、獲物……?」
状況が見えていなかったのか、或いはわかってて、意地の悪い質問をしているのか……ニュアンスはどう捉えても後者だった。
「いえ……助かりました、ピンチだったので」
正直に言う一に、少女は拍子抜けしたように、無表情になる。
「……へぇ、ピンチかぁ。このダンジョンに一人で挑戦するくらいなら、ハイオークなんて手こずる相手じゃないと思うけどなぁ」
「……」
流石に一も気づいた。
目の前の少女は"わかっていて"嫌味を言っているのだということに。