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決死の一打
「グモォオオオッ!」
再び雄叫びを上げ突進してくるハイオーク。
身体がすくみそうになるのを一は押さえ込み、じっとハイオークを見据えた。
その攻撃パターンは一度見ている。
逆に言えば、違うパターンに変えられれば、一の意図は破綻する。
しかし、ハイオークにはそこまでの知能はなく、同じパターンで仕掛けてきた。
ギリギリまで引きつけ、突進を最小限の動きで避ける。
「グルゥアアッ!」
すぐ近くにいる一を狙って、棍棒が振り下ろされる。
あえて、一はその懐に飛び込む。
(スキルを……行使する!)
地面蹴り、飛び込むように跳躍した。
「『突拳』っ!!」
全体重を右の拳に乗せる。
まるで、一自身が一本の矢となったように突っ込む。
狙いはピンポイントに、拳はハイオークの右目を捉えた。
嫌なものを潰す感覚。
全てが一の狙い通りだ、この瞬間に限っては……
「グゴゴゴガガガガッ!」
『64のダメージ!』
「っ!」
メッセージウインドウがどこまでの親切をしてくれるのか、一は知らなかったが、少なくとも怯んだとは言ってくれなかった。