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一意専心
適切なタイミングで打ち込む必要がある。
狙いはハイオークの目。
鼻などの中心を狙っても、一の能力では怯ませられないかも知れない。
目ならば、まず脆いだろうし相手の視界も奪えるかも知れない。
場合によっては追撃に魔法を使ってもいい。
ワンチャンスに賭ける以上、ありったけをぶつけるほうが賢明だ。
下手に防御姿勢を取らず、右半身を後方に半身に構える。
一撃を喰らった時点で終わりなのだ。
防御姿勢で視界を塞がないほうがいい。
両の拳を腰の高さで構える。
荒れそうになる呼吸をなんとか整え、"その時"に備える。
「グルルル……」
何か不穏なものを感じたのか、ハイオークは様子を見ている。
それでも、一は集中を切らす訳にはいかず、相手から仕掛けてくるのを我慢強く待っていた。
そう、一の狙いはカウンター。
攻撃間の一瞬の隙を狙っていた。
そのために集中し続ける必要がある……逆に言えば、一の集中力が切れた時が危険だ。
ハイオークに待つ根気があれば、一はどうしようもなかっただろう。
しかし、最初に限界が来たのはハイオークの方だった。