叫ぶ
「くっ……なんだよ……お前の畑だとでも言うつもりか?」
軽口を叩く一だが、状況は芳しくない。
一の総HPは32。
つまり残HPは6。
あと一撃でも喰らえば、まず間違いなく死ぬ。
言うまでもなく、逃走一択だ。
しかし、無防備に背を見せて走り出す訳にもいかない。
それでは、いい的になるだけだからだ。
「……」
ハイオークを睨みつけながら、じりじりと後退りして、距離を開こうとする。
しかし、敵がそんなことを許すはずもない。
「グゥオオオオオオッ!!」
「!」
雄叫びを上げ、勢いよく突進してくるハイオーク。
身体をよじって辛くも一は突進を回避する。
しかし、避けたと思った瞬間、ハイオークは棍棒を振り上げ、一に振り下ろしていた。
「うおおおっ!!」
どんなに不恰好でも当たる訳にはいかない。
一は地面を転がり、泥だらけになりながら、一撃を回避した。
「オオオッ!」
しかし、さらに追撃が、薙ぎ払いの一閃が一を襲う。
「っ……ああっ!」
さらに転がり、攻撃範囲から逃れる。
一は、言葉を発する余裕もなく、本能的な叫びばかりが声にでる。
そういう意味ではハイオークと同じ土俵に立っていた。