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ハードラック
夢中でパンテナ草を回収しだす、一。
しかし、ここはダンジョンの中だ。
目の前の報酬に目が眩んでは、足元をすくわれる。
そんなこと、誰であっても理解出来ただろう。
それでも、その瞬間……例えば、目を焼くような宝石が目の前にあったとしたら、手にする時、頭から抜け落ちてしまうことも誰にでもあり得る。
仕方がないとは言えないまでも、その気の緩みは誰にでも生じ得るだろう。
そして……その緩みも、運があれば避けることも出来た。
モンスターがその瞬間、いなかったとしてもおかしくはなかった。
しかし、残念ながらすぐ近くにそれはいたのだ。
『バックアタック!』
「!!」
そのメッセージウインドウが見えたと同時に一は飛び跳ねた。
それが辛うじて致命傷を避ける。
『26のダメージ!』
背中に一閃。
強烈な打撃を受けながらも、一は前へと逃げる。
高原を転がり、精一杯距離を取って振り返る。
『ハイオークが現れた』
豚のような顔面を持ちながら二足歩行。
手には、一に打撃を与えた棍棒があった。
それは何かに怒るように興奮していた。