プロローグ:不動一①
一言でいうのなら、彼は行き詰っていた。
人生というものは時として、そういう袋小路を生み出す。
今の世の中、『世界と繋がった者』となるのは一種のステータスだ。
とは言えど、それはあくまで資質の話。
ダンジョン探索、モンスターの討伐には当たり前に命の危険が伴う。
故に、ダンジョンに潜るのは資質とは別に覚悟も必要だ。
『世界と繋がった者』になったとしても、ダンジョンには近づかない人間も一定数いた。
しかし、その選択が出来るのも、資質があってこそだ。
世界に選ばれなかった者には、自分から選べるはずもなく、ダンジョン・モンスターから逃げるしかないのだ。
そういう意味では、彼――不動一には才能があった。
それどころか、資質だけなら、ピカイチだった。
『世界と繋がった者』となるのは、ある日突然目覚める、
もしくは『世界と繋がった者』研究が進んだことで、素養があるものを人為的な投薬や手術で目覚めさせるかだ。
後者は、様々な肉体的かつ精神的なリスクが伴う、
逆に前者はそのリスクとは無用だ。
加えて前者は年齢にして早くて10歳、遅くて57歳という記録があるが、
若年で目覚めれば、より才能があるとされていた。
一の覚醒は14歳。
才能は飛びぬけていた。