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悪魔か野良犬か
そして、姿を現したのは漆黒の狼だった。
と言っても、動物園やテレビで見るソレとは違う。
単純にサイズが3倍近く大きい、
そして目が不自然なほど赤い。
ご丁寧に、メッセージウィンドウがその名を教えてくれる。
『ヘルハウンドが現れた』
聞き覚えのある名前に一は思考を巡らせる。
と言ってもダンジョンの知識ではなく、元々あったものへの知識だ。
(イギリスだったかの伝承で、
黒い犬だかの妖精だったか?不吉を呼ぶとか言う……
あれが、犬?)
人に飼われているような犬とイメージが結びつかない。
強いて言うならドーベルマンが思い浮かんだが、
ボサボサの体毛をしたヘルハウンドは、想像のドーベルマンの毛質と一致しない。
(それとも、野良で放置されればああもなるのか?)
……そんな訳がない。
少なくとも、一にとってはそれは、犬というより狼で、
狼というより化け物だった。
そして、メッセージウィンドウはもう一つの事実も提示した。
『モンスターはこちらに気づいていない』
犬だと言うのに、鼻はきかないのだろうか?