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生きるため
「そうか、知らないか」
そう言うと、一は人差し指を影に突きつけた。
「なら、用済みだな」
そして、指先に『アクアバレット』を生成する。
「ま、マテ!知らないナンテ言ってナイだろ!
ソッチが知ってるか知らないかナンテ判断出来ないってことだヨ!」
「……駆け引きをしようと思うな」
冷たい声だった。
表情がないはずの影が強張ったように見えた。
その雰囲気を察してか、一は指を外した。
「ふん……安心しろ。これは単なる脅しだ。
余程の事がないと今すぐに殺しはしない。
蘭堂が来るまでは、な。
だが、お前が協力しなければ、死ぬことになるのは変わらない。
本当に知らないと言うのなら、諦めろ。
だが、知ってるのにしらばっくれると言うのなら、無駄に死ぬ事になる」
「……」
影は考えているのか、動かなかった。
しかし、数秒すると海外のコメディドラマのように手を広げて肩をすくませた。
「ワカった。コウサンだ、つれてイくよ……彼女がいる場所に」
「ちゃんと生きているんだろうな?」
「……タブン、ね」