一歩目の先
最初の一歩目がこの上なく重い……
たかが一歩、されど一歩。
それは死地に赴くための一歩だ。
それを理解しているからこそ、怖気づく。
それでも、この場に来た以上、一は踏み出すしかない。
「っ……!」
目を閉じて、唸り……覚悟を決めて目を見開く、
そして、踏み出した。
一歩。
その一歩で何かが起こった訳ではない。
しかし、一の腹が決まった。
一歩、また一歩と踏み出すと、ダンジョンの奥へと歩みを進める。
慎重に、息を殺して、心臓がばくんばくんと流動する音にさえ、気づかれるのではないかと、一は不安だった。
だけど、一は歩みを止めない。
この命を危険に晒す一分一秒を無駄にしたくない。
一刻も早く、一カケラでも多く、パンテナ草を手に入れなければ、無駄に危険な目にあっているだけだ。
「……!」
ガサガサと自分以外が草をかきわける音がした。
一は咄嗟に姿勢を低くした。
モンスターと戦うという選択を取らない一にとってはそうする他なかった。
見つかれば致命的な姿勢だったが、そもそも見つかった時点でほぼ詰みなのだ。
それならば、リスクを背負ってでも見つからない努力をするべきだ。