139/146
深層
「……」
引きずりこまれるような錯覚。
漆黒から連想される宇宙……深い闇。
ただでさえ疲弊していた精神が蝕まれ、飲み込まれそうになる。
そして、その中でイメージが浮かんだ。
「二……葉……」
しかし、そのイメージはすぐに入れ替わる。
次に瑞葉、それもすぐに消えて亡くなった母親、さらに変化して二葉の担当の女医、その次はギルドの職員、……
一に関わりがあった女性が印象深い順に写しだされていくーー
「ーーはっ!」
そのまま飲み込まれそうになった意識を引き戻す。
それは本能的な危機感によるものだった。
「はぁ……はぁ……」
無理矢理身体を覚醒させたことで、息が荒くなる。
倦怠感もあるが、目は冴えた。
一は立ち上がって、距離を取った。
近くにいるのは余り得策とは思えなかった。
「くそっ……なんなんだ、オマエは!」
飲まれかけた事で、一は"影"への警戒度を高めた。
少なくとも、至近距離で直視してはいけないことは充分に理解した。




