かつては自分
「自分が行く」
そんな中、蘭堂は言い切った。
「……大丈夫なのか?今の装備や体調で、ここで息を潜めるのと、ダンジョンを出て、人を連れて戻ってくるのだと危険度が違うぞ」
「なぁに、ダンジョンさえ出れたら装備を整えられるし、他に誰か傭兵を頼むことも出来る。脱出だけさ」
「その脱出が危険だと思うが」
そもそも、蘭堂は一に会った時点で一人行動が危険だからその場に動けずにいた。
あの時よりもさらに悪い状況でダンジョンを脱出するのは無謀に思えた。
もっとも、つい先日までそれ以上のリスクを背負って、
同じダンジョンに来ていた一と比べれば、まだマシかも知れないが。
「……だとしても、この場は兄さんに任せるしかない。
その影が復活して暴れ出しても、自分では抑えられない」
「それは……確かに」
「それに、知り合いとは言え、自分の言葉で『心理士』を呼びたい。
兄さんを信頼してない訳じゃないが、人に任せられない」
「わかった。そこまで言うのなら、任せる。
ただ、せめてさっき即席で作った矢、アレと同じものをいくつか用意してからにした方がいい。
少しでも、戦闘手段があった方が成功確率は上がるだろ」
「確かに、そうだな」