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一歩目の前
翌朝、一は銀行が開いてすぐに入金を済ますと、昨日決心したままに『ミダスの森』に入った。
当然、同行者はいない。
一人で全てを対処しなければならない。
モンスターと戦えば、死ぬとしても……
「……」
一は息を殺す。
僅かでも、生存率をあげるために、気配は隠さねばならない。
その中で目的のものを探さねばならない。
(……入ってすぐにあるとは思ってないけど)
見渡す限り、それらしきものは見つからない。
あったとしても、先に進んだ者が手に入れているだろう。
それは他に『世界と繋がった者』がこの『ミダスの森』に入っているということ、
一にとっては、良いことでも、悪いことでもある。
良い部分はモンスターの注意を分散させてくれること、
そして、運悪く戦闘になった際に、助太刀に来てくれるかも知れないということ。
悪い部分はそれら全てが恐らく競争相手になるということだ。
そして、どうあがいても、先へと進まないといけないということでもある、目的のためには。
それが、死に繋がる道だったとしても……