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物体
ぐねんぐねんと影が蠢いていた。
「コイツ……本体がやられたってのに……」
(いや、そもそも別モノなのか?
そういえば、この影を使ってから、蔓の攻撃をしなくなったよな……)
「というか、なんなんだ、コレは……」
一は思いきって、影を掴んでみた。
相変わらずスライムのようの触感で、冷たさにぞくっとした。
「兄さん、素手で触って大丈夫なのか?」
「……大丈夫かはわからないけど」
しかし、気にはなった。
さらに、ぐっと手を突き入れていた。
すると、密度がきゅっと閉まった。
まるで、穴なら空いたバルーン人形から空気が漏れるのを抑えたように、人の形に成形した。
それはのっぺらぼうのマネキンのようで……しかし、穴のような口が開いた。
「解……解……」
「喋った?」
「っ!!稟っ!稟の声だっ!」
蘭堂はそのまま、影に手を突っ込もうとしたところを一に制された。
「……落ち着くんだ。能力を模倣したなら声だって模倣出来ることもあるんじゃないか」
「だけど……これが唯一の手がかりじゃないのか!?」