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歓喜と現実
「ふぅ……」
達成感というよりは疲労感と安堵から、一はその場に座り込んだ。
「まさか、あの化け物を!」
反面、蘭堂は興奮してはしゃいでいた。
「……よく、眼を撃ち抜いてくれた。
あれがなかったら、もっと面倒なことになっていた」
「あ!いや……兄さんが考えてたことがわかったからさ。
自分も、狙いを合わせようと脆い場所を狙ったんだ」
「そうか、でも、即席の矢を用意して……よくやってくれたよ」
「いやぁ、兄さんの活躍ほどじゃないよ」
よく見ると、蘭堂の手元には直しそびれたのか、矢の製作に使ったらしい、小型のナイフがあった。
片面がヤスリのようになっており、ああいった工作をするための装備に見えた。
(しかし、あの短時間で成形出来るのか。
器用なんだな)
と、考えたところで、一はすっと立ち上がった。
「だけど、勝利を噛み締めるのはほどほどにしよう。
まだ、目的は果たしてないだろ?」
「あ……ああ、そうだ、その通りだ。
けど、コイツ、稟の偽物を」
「影か……」
と、一は気になって、影が倒れてる方を見た。